がらくたのハート
オーブンが、蒸気を吹いて料理が出来た事を知らせました。

ワタシは、オーブンの蓋を開けて、器を取り出します。
全然熱くないですよ。


「出来たようだな。ボロのビーフシチューのパイ包みは、絶品だよ」

「まあ、楽しみ」

テーブルに、器を置きました。
あらかじめ、スプーンとフォークは置いてあります。
もちろん、ナプキンも。
料理が服に着いたら、落ちにくいですからね。

『さあ、どうぞ召し上がって下さい。熱いですから気を付けて』




「わあ、おいしい! とてもロボットが作ったとは思えないわ」

『お手伝いロボットですから。料理や洗濯、掃除は出来ます』


味と言う物も、どう感じるのでしょうか……。
やっぱり、人間も成分を分析して、味を保存しながら食べるんですかね。

博士もカノンさんも、笑ってる。

『あの、二人はどうして笑うのですか?』

「笑いと言うのは。そうね、幸せの事よ」

『幸せ? それは保存出来ますか?』

「いいえ、記憶には残る物だけど。取っておく物じゃないわ。感じる物なの」

『キオク……難しいです』

キオクに残る事と、保存する事は違うんですね。
人間は、何処にそれを取っておくのでしょう。
ディスクですか?
チップですか?
データに保存する事は出来そうにありません。

計算しても答えが出ません。
やっぱり人間は、難しいですね。
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