16の、ハネ。



“ 知ってた ”



その言葉を聞いて、複雑な思いに駆られる。

陽人が嘘をついたり、言い訳したり、ごまかしたりしなかったことに対しての安心感。

反対に、今まで黙ってたことへの怒り。


私の思いのやり場は、どこにもなかった。

「なんで」

なかったから、近くにいる陽人に当たってしまった。

「なんで、ずっと黙ってたの? もしかして、見せしめ? 最初から、私を騙してたのっ!?」

「違っ……」

「言い訳すんなっ!」


本当は、陽人は言い訳なんかしてないってわかってる。

私を騙すような真似もしないって、わかってる。

わかってるけど、私の気持ちは制御できない。



恐怖とか、憎しみとか、悲しみとか、辛さとか。



そういうものが、全部私を襲うんだ。



「音羽」

陽人が心配そうにこちらを見つめていた。




気がつけば、私はボロボロと涙をこぼしていた。




これ以上、誰かを、傷つけちゃダメだ。


「もういい、帰る」








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