小悪魔カレシの甘い罰
失恋とキスと美青年






 エスカレーターから、しんと静まり返るホームに吐き出される。


 その瞬間に、涙があふれた。

 それまでの喧騒と切れ放された途端、そこまで保っていた理性がぷつんと切れてしまったらしい。



 今夜、失恋をした。

 この恋が終わりに向かっていることは、うすうす感じていた。

 彼の魔が差したといっても、2年という月日が2人の間に築いたものに比べたら笑い飛ばして許せるはずだった 

 
──それが本気でないならば。


「別れてくれないか。好きな子ができた」
 
 
 最後に放たれた言葉は淡々としていた。

 まるで別れの手続きに必要な台詞のように温度がなかった。
 
 
 そう言った彼が、少し見ないうちに別人に思えて来て、その後ろで影響を与える誰かを想像して、また涙があふれる。
< 2 / 91 >

この作品をシェア

pagetop