仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「け、慧さん、もう……っ」

「たくさん消毒しておかないとね……。誰があんなキス、許すと思う?」

「だって、あれは撮影で!」

「そうだけど。あんな顔する必要あった? 小野寺くんを誘ってるのかと思った」

「誘っ……!? 私は、ただ、慧さんのことを思い出して――!」

言葉を塞ぐように、また情熱的なキスをされる。

激しくも甘いキスに、全身が蕩けるようにくたりと力が抜けてしまう。

締め上げられているコルセットが苦し過ぎて、もう一刻も早く外してほしい。

唇を優しく離し、慧さんが意地悪な笑みを深めた。

「思い出して?」

「思い出して、その……」

「君の照れてる顔を見ると、本当にたまらなくなるんだよね……。君が良いって言うまで、もう待てそうにない」

琥珀色の瞳の奥には甘い熱が揺らめいている。


「愛してる、結衣」



窓の外には、群青の空に満天の星が輝き始めていた。

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