仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
所属二年目の現在はどうにもこうにもいかない状態ではあるものの、コマーシャルモデルになったこと自体は全く後悔していない。

小野寺さんには感謝こそすれ、売れなくて恨むなんて気持ちはこれっぽちもないのだ。


「本当に私の力量不足なので……。むしろ新人時代にあんなにお仕事を頂けたことが幸運だったんです! 小野寺さんには沢山ご迷惑をおかけしたと思います」

私は「いつも、本当にありがとうございます」と小野寺さんに頭を下げた。
彼は困ったような視線でこちらを見つめながら、緩く首を振る。

「いいや、俺の力不足だ。『エテルニタ』の仕事は一緒に頑張ろうな」

「はい。宜しくお願い致します。忘れないうちに、常盤社長から預かっていた名刺です」

名刺入れから取り出した名刺を彼へ手渡す。

「確かに受け取った。お疲れ様」

「はい。今日は送っていただき、ありがとうございました。お疲れ様です」

車から降りて一礼する。
小野寺さんが見送ってくれる中、私はマンションのエントランスに入った。
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