愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
そして、雫はなんと恋愛経験もないというのだ。
これは本当に驚き、そして安心した。
実を言うと、俺はこの点を長らく引け目に思っていた。雫はあんなに可愛いのだ。ぱっと見、オタク要素ゼロだ。さぞ華麗な恋愛経験を持っているだろうと思っていた。
恋愛経験に乏しい俺が、もしベッドインまで、持ち込むことができても雫を満足させてやれるだろうかと。

しかし雫は俺以外とはキスもしていないのだ。
つまり、雫の初めてはすべて俺がもらう権利があるということ。
男としてこれほど嬉しいことがあるだろうか。

俺は神に拝んだ。
ありがとう、最高の出会いと結婚をありがとう。彼女は絶対俺が幸せにします。
箱根の宿で、愛しい妻を腕に抱き、俺は心で涙を流した。

なお、この仲直り旅行の提案者である日向には箱根土産の黒いラスクとともに顛末の報告をした。
仲直りができ、彼女に男はいなかったこと。これから夫婦として仲良くやっていこうと誓ったこと。
雫が望むかわからなかったので、本人がひた隠していたアニメ大好きという趣味は伏せておいた。

『やったじゃない!ハネムーンベイビーできちゃうかもよ〜。箱根ベイビーだねー!』

無邪気に喜んでくれる日向に曖昧に微笑み返し、俺は頷いた。

言えなかった。
ここまでやって、キス以上進めなかったなどと。

初心な雫に雰囲気で無理強いしたくなかったし、あとは俺自身、彼女の優しい気持ちに触れキスができ満足してしまったのだ。
手を繋いで眠るなんて子どもみたいだけれど、充分幸せだったのだ。

俺と雫はこれからゆっくり恋愛ができる。焦ることはない。
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