愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
4.奥さんがわからない



仕事の合間にコーヒーを飲むくらいは許された職場だが、俺は普段あまり離席しない。用を足したり、隣の部署に行ったりというのはあるが、喫煙所や自動販売機前で油を売らないほうだ。
もちろんその程度の休憩はいいと思うし、同僚がやっているのを嫌だとは思わない。俺自身のこだわりで、集中して仕事をしているときはいっぺんにやってしまいたいタチだからだ。
業務上、臨床試験をする病院に赴いたり、外部打ち合わせも多いため、職場にいられるときはまとまった時間ですべて終わらせてしまいたいのだ。だから、以前は残業も多かった。

そんな俺が最近は極力定時で帰れるように仕事を調整しているなんて自分でも信じられない。
さらにその分忙しくなっているのに、現在俺は、自動販売機前でコーヒーを片手にぼんやりしている。
誰も通らない廊下ではあとため息をついた。

結婚して約二ヶ月。季節は冬から春に移り変わり始めているが、俺の心はまだ真冬のままだ。

俺の奥さん、雫のことがまったくわからない。

雫はいい嫁だ。仕事の合間に家事を頑張ってくれ、結婚してから始めたという料理もどんどん腕をあげている。
毎日、屈託ない笑顔を見せてくれ、俺の心を癒してくれる。
しかし、俺はいまだに雫のことがわからない。
いや、日増しにわからなくなっている気がする。


< 67 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop