愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
ふたりで旅行……その響きにくらっときた。
雫と旅行……行きたい。新婚旅行もなかった俺たちだ。
ふたりでどこかに出かけるということ自体経験したことがない。

「いつもの自宅にふたりっきりじゃ煮詰まっちゃうじゃない。普段と違う景色見て、美味しいもの食べてらっしゃいよ。そんで仲直りするの」

仲直りまでのプロセスは具体性に欠けるが、魅力的な案であることは間違いない。

「日向……おまえすごく頼りになる同僚だな。うまく仲直りできたあかつきには何か礼をさせてくれ」
「そんなのいいわよ。だって、榊がひとりでバタバタしてるの見るの楽しいもん」

素直な感謝に砂をかけるような言葉が返ってきた。
日向麻紀、やはり俺の新婚生活を面白がっている。



単純かもしれないが、早速午後には有休を申請した。三月までに取らなければならない有休は10日を超えていて、なんなら一週間くらい休めと言われたものの、さすがに仕事が溜まりまくってしまうので勘弁してもらった。

木金の休みを取得すると、帰宅時に書店で近隣の温泉地のガイドブック雑誌を眺める。
箱根あたり、いいんじゃないか?新幹線でもロマンスカーでも行けるし、ザ・温泉って感じがする。ザ・観光地って感じもする。
……言い訳するが俺はイメージが貧困だ。

ともかく雑誌を買って帰り、遅番の雫が帰宅するまでにネットのホテル予約サイトを巡り、口コミやレビューで評判のいいところを探した。

目星をつけたところは、平日のせいか予約がとれた。少しグレードの高い部屋ということだったが、こつこつ貯めた貯金はこんなときに使わずいつ使うのだ。
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