愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~
ここで『よし、旅行中にラブラブ夫婦になっちゃうぞ』くらい気概のある女だったらよかったんだけど、なにしろ三次元の恋愛まったくわからない女子だから、『気まずい』の方が大きい。
はぁ、どうしよ。二日間ずっと一緒なのに。

ふと、横を見ると高晴さんが座席に背をもたせ、うとうととしている。
あ、寝ちゃいそう。
私はその顔を盗み見ながら、息を詰める。ほんの数秒で寝息が聞こえ出した。

おばさまたちの声がかなりうるさいのに、よく眠れるなぁ。
そういえば、ゆうべいつまでもごそごそしていたっけ。旅行の準備だろうけど、たかが一泊なのに何をそんなに用意してたんだろう。

まあいいや。寝ちゃったなら気まずさ半減。
私はボストンからタブレット端末を取り出した。ぱっと見られるようにアニメをいくつか入れてある。着くまで見よーっと。
イヤホンをつけ、道中趣味の世界に入ることにした。


80分ほどで箱根湯本の駅に到着した。
電車を降りてまず感じたのは、都内よりはるかに寒いってこと。
というか朝から気温が上がっていない感じかな。暖かい日だと聞いて春物のコートにしちゃったけど、この気温はカイロがいる。売店で売ってればいいんだけど。

「雫さん、これを」
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