よくばりな恋 〜宝物〜
最愛


昼休み、空斗はアメリカの科学雑誌片手にサンドイッチをつまんでいた。今月号は会社の1つ先輩である立花が論文を発表している。


「どうよ?」

声をかけ、隣の席に座ったのは当の本人だ。

「ああ、いいっすね」

「アッサリだな」

「そら多少は悔しいですし」

「お前にそう言われるならまあいい出来だな」


立花は同期の坂田の婚約者だ。

来年、研究所の移転と同時に結婚を決めている。

空斗もいい加減、何とかしなければと思ってはいる。ただ紅を前にすると何も言えずつい先送りにしてしまっていた。


「斯波、お前さーー」


言いかけた立花が言葉を切る。どうやらスマホが鳴っているらしく、パンツのポケットから取り出した。

「珍しいな、ちょっと悪い」

そう言った立花がスマホに出て、何事か話している。その立花が徐に空斗にスマホを渡してきた。


「最初に謝っとく、すまん。乃里からやけどな、アイツ南河内の育ちだから」


空斗は受け取りながら首を傾げる。乃里の育ちが南河内だから何だと言うのだ。
< 24 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop