よくばりな恋 〜宝物〜


紅は?と空斗が聞くと真っ青な顔して茫然自失やったから早退させたと佳代が答えた。


それにしても今回は今までと違ってなんだかショックの受け具合が普通じゃなかったからーーと佳代が言い、電話を切った。


そう言えば市田は今日は朝からいない。


考えるまでもない。


立花にスマホを返すと「帰ります」と荷物を纏めた。

「え?お前朝から反応待ちの実験あるやろ?!」

「立花さんが続きしといてください。婚約者が実は河内のオッサンやったことは内緒にしとくんで」

慌ただしく席を立ち、情けない顔をした立花についでに上司に体調不良で早退と伝えてくれと言いおいて空斗は研究所を後にした。



最寄り駅で降り、紅はやっとの思いでマンションにたどり着いた。部屋の鍵を開けて、バッグをほおり投げベッドに突っ伏す。


ウジウジと考えて、空斗に何も言わず、何も聞かなかった自分が悪い。欲しいものは自分で手を伸ばして掴まないと手に入らない。手に入らなければ潔く諦めて前を向かなければいけなかった。
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