嘘ごと、愛して。

「…晴人に、私は釣り合わないから。だから、もっと相応わしい女の子にーー」

「アホか。そんな小細工しても、晴人が気付かないわけないだろ」


もどかしい。
晴人を叩いて、真凛を迎えに行けと言えばいい。


けれど晴人は自分がいることで、真凛の学校生活が壊れてしまうことを気にしていた。
普通の女子高生として過ごして欲しい、それが願いだ。


互いに互いを思いやるあまり距離が開くばかりだ。


その距離を縮めることはできないが、これ以上広めないようにすることが、俺の役目だと思う。

けれど、留学することに決めた。
家族のために、なんて言ったらおごましいが、向こうで妹が待っている。

その前に、2人を元の鞘に納めないと。


「……晴人、私のことなんて忘れちゃってるんじゃない」

「あいつの中の女って、真凛しかいないから、それはねぇな」


「………正義、4月から留学するんでしょ?その前にお姉ちゃんに会う?」


「余計なことすんな」


はぐらかされる。
ホント、どうしたらいいものか。

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