フェイス
☆☆☆

走って走って走って、気が付けば家が目の前にあった。


大きく息を吸い込んで呼吸を整える。


全身から汗が吹き出し、震えが止まらない。


「あたしは可愛い。あたしは人気者だ。ひとりぼっちなんかじゃない」


ブツブツと呪文のように繰り返し、洗面所へと駆け込んだ。


マスクを取り、鏡の前にたつ。


そこにいたのは顔中から黄色いウミが出た汚い顔の葉月だった。


目を見開き、悲鳴をどうにか喉の奥へと押し込めた。


あれだけ洗顔したのに。


あれだけクリームも塗ったのに!


「違う。こんなのあたしじゃない……!!」


乱暴に顔を洗い、そのまま二階の自室へと駆け込んだ。
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