沈黙する記憶
「正直、夏男が嘘をついているようには見えない。だから怪しいとも思っていない。でも、杏といつも一緒にいた夏男から何かを聞き出すしかないと思うんだ」


「だけど、夏男はずっと捜査にも協力してるでしょ?」


さやが言う。


「あぁ。だけど、警察に言わないような些細な事はあるだろう? そういう事なら、きっと俺たちにはすんなり話してくれると思うんだ」


「それじゃぁ、さっさと夏男に家に行こうぜ」


克矢がそう言い、ベンチから立ち上がる。


しかし、それを裕斗が止めた。


「全員で行くと夏男を警戒させるかもしれないだろ。行くのは1人か2人にしよう。残りのメンバーはいつも通り街で杏がいないか探す事にしないか」


「それならあたしが行きたい」


あたしはすぐに手をあげてそう言った。


杏に関わることならなんでも知りたいし、杏と仲のよかったあたしなら、夏男も話しやすいと思う。


「わかった。それなら千奈に任せよう。俺たちは杏を探す」


こじれかけていた仲間との関係が、杏を探すという1つの目標で少しだけ回復したように感じられたのだった。
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