沈黙する記憶
「本当。千奈お嬢様みたい」


由花までそう言って茶化してくるので、あたしはようやく笑顔になれた。


「今日で最後になるのかな?」


あたしが言うと由花は真剣な表情になり「最後にならなきゃ、杏の居場所がわからないままだよ」と、言った。


「そうだよね……」


警察も懸命に捜査しているが、いまだに進展はないらしい。


このままではどんどん情報は少なくなり、いずれ風化していってしまう。


そうなる前に、杏を見つけないといけない。


「夏男には辛いかもしれないけれど、あたしたちができる事を一生懸命やらなきゃダメなんだよね」


あたしは自分に言い聞かせるようにそう言ったのだった。
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