沈黙する記憶
夏男が注文した野菜ジュースが届くのを待って、裕斗は話始めた。


「夏男、杏がいなくなった当日は、家にいたんだよな?」


「あぁ。そうだよ」


「誰かと一緒だったのか?」


「誰かって……親はいたけど……?」


夏男は首を傾げてそう返事をした。


「学校の友達が遊びに来たりとかは?」


あたしが聞くと、夏男は左右に首をふってそれを否定した。


「いや、来てないな」


その一言で、さっきまでの可能性がすべて崩れて落ちていく。


あたしは体中の力が抜けるような思いで、背持たせに背中をつけた。


「スマホはどうしてた?」


裕斗が更に夏男に聞いた。


「スマホ? 部屋にあったと思うけど……」


夏男は思い出すように目を細めてそう言った。


「スマホから目を離した時間は?」


「それはあったと思うけど。なんなんだよ、さっきから」


質問責めにされている夏男は顔をしかめてそう言った。
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