沈黙する記憶
「杏がいなくなった原因が妊娠した事だったとしたら、夏男の両親が一番怪しいんだ」


裕斗がそう言い、昨日考えた推理について話始めた。


とても悠長に、まるで探偵ドラマの主人公にでもなったように、気持ちよさそうに語って行く。


その様子にあたしは裕斗から視線をそらせた。


なんだか裕斗の推理や言葉の1つ1つが演技っぽくて、信用ができなくなっていく。


俺はこんな考え方ができるんだ。


すごいだろ?


いちいちそう言われているような気がした。


「なるほど。たしかに夏男の両親は怪しいな」


克矢が頷く。


「それなら、杏は夏男の家にいるの?」


さやが裕斗へ向けて聞く。


すると裕斗はすぐにそれを否定した。


「家にいるとしたら夏男が気が付くだろ。一軒家だけどそんなに大きくない家だし、人間が1人増えていたらさすがに気が付くよ」


「そうだね。だとしたらどこかのホテルに監禁されているとか?」


由花が横から口をだし、裕斗が嫌そうな顔を見せた。


自分の見せ場を奪われたという雰囲気が伝わって来る。
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