浮気の定理
桃子の場合①
「ただいまぁ……」



真っ暗な部屋に向かってそう呟きながら、リビングの電気をとりあえず点けた。



小さく溜め息をつきながら、テーブルの上に鞄と鍵を無造作に置く。



着ていたベージュのトレンチコートを脱いでソファーの背もたれにバサッとかけると、自身も体を預けた。



目を瞑り、今日もまだ帰らない雅人を思う。



みんなより早く帰ったとはいえ、家についた頃にはもうすでに6時を回っていた。



雅人の帰宅する時間まで、まだ5時間もある。



けれど、最近はその時間にさえも帰らず、午前様であることが多かった。
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