浮気の定理
最初に静寂を破ったのは、思いの外ありさだった。



「涼子……こないだはごめんね?

こんなことになってるなんて知らなかったから……」



「もう、いいよ

私の方こそ変なこと言ってごめん……」



私たちの様子を桃子は静かに聞いている。



口を挟む気はないのだろう。



「あのね?涼子……実はあの子供のことなんだけど……」



「いい!言わないで?もういいの……あの子は和也さんの子なんでしょ?……それでいいから」



「でも……」



「ありさが言ったんだよ?

和也さんのためにも、死ぬまで否定はしないで」



今の会話で、だいたいのことはわかってしまったに違いない。



それでも桃子は黙ったままだった。
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