悪魔の運動会


「うそ‼︎な、なんでよ⁉︎」


机を強く叩いて、植松理沙が立ち上がった。その拍子に、椅子が激しい音を立てて倒れた。けれど、その音に負けない静かな声で次の名前が読み上げられる。


「植松理沙」


と__。


2票が入った。


まさかの名前に、俺たちは唖然とするしかない。


いやでも待てよ。


2票が入ったということは、当たり前だが、誰かが2票入れたということ。俺と直人と相原、以外の誰かが。


「寺脇リカ」


ここで新しい名前が呼ばれた。


ピクリと肩を震わせたリカは、いつものように俯いている。長い黒髪に隠れ、その表情は分からない。


「や、やっぱり落ちるのはあんたよ‼︎あんたが落ちればいいのよ‼︎」


振り返って鋭い言葉を投げつける理沙は、少しホッとしたように見える。反対に、リカは机に突っ伏して肩を震わせた。たぶん__泣き出したんだ。


無記名投票なんてどこへやら、お互いに投票したに違いない。


第3競技の玉入れでは、玉をせっせと拾っていたはずの2人が競うなんて。


「植松理沙」


しかし、理沙のリードが広がる。


失格者へのリードだ。


残る票数は2。


そのどちらもがリカに入らないことには、理沙の失格が決まってしまう。


「植松理沙」


「植松理沙」


そのどちらもが、理沙に入った。


「植松理沙、失格」









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