悪魔の運動会


【木崎涼子】


「いいか、玉入れを思い出せ」


間宮くんが、振り返って私に言った。


コツは「玉入れ」にあると。もっと正確にいうなら、玉入れの時のカゴ持ちだ。


四方八方からカゴにぶつけられる玉。重くなっていくカゴ。重い玉が当たっても、腰に力を入れて踏ん張った。


あの感覚を思い出せという。


「残り3分だ。向こうも勝負を仕掛けてくる。でも立花とまともにやり合っても負けるだけだ。それなら」


猛烈な勢いで突っ込んでくる薫とぶつかる瞬間、間宮くんは私の肩に跨いだ。


3人で1頭の馬。


そのうち2人を捨て駒にし注意を引きつけて、大将を肩車した私は、紅組の騎馬にするりと近づいた。


カゴ持ちの要領で。


大将のリカの首を執るために__。


「罠よ‼︎」


いち早くそれに気づいた薫が、馬を引いてかわそうとしたが、馬は三位一体。


後ろ足の反応が遅れた。


間宮くんが伸ばした手は、なす術なく座っているだけの寺脇リカの帽子を掴み取る。


「白組の勝利」


呆気ない幕切れだった。


そして私は確信する。


気の毒だが、リカが落ちるだろう。


誰の目にも明らかだった。


明らかだったのに__。








< 275 / 453 >

この作品をシェア

pagetop