あなたを好きにならないための三箇条
そんな中

「……ゃ…」と


人通りの多い道に差し掛かった時
私は確かにこの耳に捉えた

「…悲鳴が聞こえる…」

何があるのか想像もできない
けれど確かに女子の悲鳴が聞こえた。

「…? 気のせいだろ」

彼には聞こえなかったのか首を傾げているが…。

「…私が女子の悲鳴を聞き間違えるはずがない…!」

声のした方へと駆け出した。
後ろから彼が追いかけてくるのを感じる。

と、

「…ゃ…お願い…します…やめ…さい」

声が少しずつ大きく聞こえて…


「やだっ…!」


少女のかすかな悲鳴と共に私は飛び出した


「…何をしてる…!」


ビルの陰に隠れて誰の目にも留まらない場所で
少女が複数の男に押さえ込まれていた

「…っ」

少女の目には大量の涙があって
その服は乱れている


「待っ」


彼の制止も聞かず持っていたカバンを地面に放り投げて
私はそのうちの1人に飛びかかった。
私の膝が男の頰に激突する

漫画でいうと『バキィッ』って効果音が入るところ。

呆気にとられて動きを止めた男たちを突き飛ばして
私は少女の膝裏に手を滑り込ませて抱き抱えた
「おいっ!捕まえろっ」

追いかけてくる男たちを振り切って
全速力で走って大通りに逃げる



人の多くなった場所までは追ってこなかったらしく
後ろを振り返っても誰の姿もなかった


「…大丈夫?」

震える少女の足を下ろし乱れた服のボタンを留めながら私が問えば
少女は青ざめた顔で私を抱きしめた


「…ありがと…ございます」


その体は恐怖からかかすかに震えていて
涙がジワリと私の服を濡らして行く感覚が伝わってくる



私はそのか弱い背中に腕を回して…



「…もう、大丈夫。大丈夫だよ…」



優しく
それでも強く

言葉を紡いだ
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