秘密の会議は土曜日に
なんということだろう、私の社会常識は小学生にも劣るとは。合コンに行ったというカケル少年のお兄様に感謝せねばならない。


ボランティアの講座が終わるなり、急いでお店に向かう。ちなみに私は、言うまでもなくお洒落のセンスに自信がない。現にカケル少年に『クソだせー』と言われているのだから、私が選ぶ服では駄目なんだと思う。


なので、私が知ってる唯一のお洒落なお店、以前に閣下に洋服を買って頂いた中央通りのお店に向かった。

「何がお探しですか?」と声をかけてくれた店員さんに深く一礼して、お願いをする。


「どうかっ、仕事に行ける服を教えてください!

私のような者がこのお店の服を着るのはご不快でしょうが、私が着ても問題ないような服を選んで頂けませんか?」


「お客様、そんな頭を下げたりしないでくださいって。

……って、あー!その服!!『月島こどもプログラミング教室』ってあなた!

もしかして、こないだスラッとしたすっごいイケメンの人と来店してくれた方ですか?」



さすが閣下、あの短時間の間に店員さんに記憶されてしまうとは、常に背景と化している私とは大違いだ。


「雰囲気ぜんっぜん違うから分かりませんでしたよー。その強烈なパーカー着てなかったら絶対わからなかった。」


このボランティアスタッフのパーカーはそれほど目立つものだったんだ。お洒落な空間で急に居場所を無くしたように感じて、思わずパーカーの裾をつまむ。


「喜んでお手伝いさせていただきますよ。オフィスのドレスコードは硬め?少しカジュアルもありですか?」


店員さんはそんな私を気にする様子もなく、全身のサイズを確認していく。


あとは店員さんの質問に答えるだけで、てきぱきと洋服を選んでくれる。私はその度に試着室で袖を通し、どの服とどの服を組み合わせたらいいか教えてもらって携帯に写真を撮った。


「靴はいかがなさいます?当店の靴のお取り扱いはそう多くはないんですが……」


綺麗な靴が並んだ一角を見ると、その中でもひときわヒールの高い、ツンと尖った形の靴に目が吸い寄せられる。
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