秘密の会議は土曜日に

「！？」


身に覚えのある古い呼び名で声をかけられて、びくっとして見上げると、華やかな雰囲気の男の人が肩に手を置いた。


「覚えてない？ 同じクラスだった鴻上颯汰だけど。」


「こ、鴻上くん……！？」


昔ひっそりと好きだった、そして嘘の告白をして私に世の中の男性というものの厳しさを教えてくれた鴻上くん。


随分と大人になっているけど、よく見ると当時の面影が残っている。ぱっちりとした大きな目や口には、サッカー部でイタズラっ子だった頃と同じ笑顔が浮かんでいた。


でも綺麗な額には柔らかく揺れる髪がかかり、当時よりも逞しくなった体つきと、隙なく整えられたスーツ姿はもう大人の男性という感じがする。黒いスーツには、エヴァーグリーンの社章が光っていた。


「しし失礼しました、鴻上様。つい、昔の癖でくん付けなどっ！」


「はぁ？何言ってるの、今さらかしこまる方が変だろー。

つーかお前さ、つくづくあの田中だよなぁ……。

見た目だけならそこそこキレーなお姉さんになってんのに、すげー挙動不審なんだもん。一発で分かったよ。」


「なんですと！？」


「やばいウケる、その喋り。懐かしい。」


鴻上くんはお腹を押さえて笑うと、シャンパングラスを二つ手にしてそのひとつを私に差し出す。


「こんなところでまさか田中に会えるとはな。まあでも、田中は絶対この業界にいるとは思ってたけど。

とにかく、再会を祝して飲もーぜ。かんぱーい！」


「……乾杯。」