秘密の会議は土曜日に
理緒へ

今日はありがとう。議事録作成、お疲れ様。

できれば理緒がどう思ったのか書いてほしかったけれど、まずは及第点です。やっと俺の気持ちを理解してくれて嬉しい。

ちなみに、理緒の違反回数は最終的に34回となっているため訂正を。

宗一郎


* * *


出勤中、つい携帯で何度もメールを見てしまう。もう暗記するほど文面を眺めているのに、また読みたくなるのは何故だろう。


「おはよー。理緒、朝からニヤニヤしてんなよ」


「うわぁっ!お、おはよ鴻上くん」


鴻上くんは「田中」というのやめて「理緒」と呼ぶようになった。同じグループの中に、田中という苗字の人が三人もいるというのがその理由である。

他の人もからも、「理緒さん」とか「理緒ちゃん」とか呼ばれるようになり、オフィスで「田中さん」と呼ばれることの方が少なくなった。

そんな中、「田中さん」と呼び掛けてくるのは……


「おおおお早うございます、高柳さん」


「お早うございます。こちら、落としましたよ?」


ぼんやりしている間に本を落としてしまったらしい。深く頭を下げてお礼を言おうとすると、手渡してくれる時に指先が触れて全身がざわっと緊張した。


「あ……りがと、ございます」


「いえ」


高柳さんは外出の予定でもあるのか、エレベータには乗らずに颯爽と歩いてロビーに向かう。


「お前、高柳さんの前で相変わらず挙動不審だなー。」


「そそそうかな?私いつも挙動不審だけど?」


「それもどうかと思うけどさ……

ま、あれだ。念のため言っとくと、高柳さんはやめとけ。

これまでもあの人に舞い上がった女が泣くのはたくさん見てきたから。」
< 88 / 147 >

この作品をシェア

pagetop