キライ、じゃないよ。
後は、好きだと。

付き合って欲しいと。

そう伝えるだけだったのに……。

けたたましく鳴り出した、会社用の携帯の呼び出し音が俺らの間の多分仄かに甘い空気だった筈のものをぶった切った。


「なんだよ!もう!」


声を上げた俺を護がびっくりした表情で、だけどおかしそうに笑い出した。


「出なくていいの?」

「……出る。ごめん」


携帯に出て、最初は相手の声を聞きながらも、隣の護に意識が向いていた。

けれど電話の内容に慌てて、意識を携帯に向けた。

営業先の配送上でのトラブルらしく、先方から自分を呼ぶように連絡があったようだ。

仕事用の携帯に着信の履歴はないが、トラブルの最中うまく連絡が取れなかったのかもしれない。


「今すぐ向かいます」


そう言って携帯を置いた。

隣の護は心配気に顔を向けてくる。


「なにかトラブルみたいだね。私降りるからすぐに向かった方がいいよ」

「いや、俺が連れ出したんだから、護の事は家まで……」

「どこに向かうの?」


被せるように聞いて来た護に営業先の場所を答える。


「反対方向じゃない。いいから行って。仕事なんだからそっちが大事」


護は、俺のコートを後ろへ置いてからバッグを持って車をおりた。
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