キライ、じゃないよ。
結局八田くんに送ってもらうことになって、まずは田淵さんのアパートに向かった。

アパートの前に着いて後部座席を見れば、原川さんは田淵さんの膝の上で穏やかな寝息を立てている。


「あー、ダメ。全然起きない」


何度声をかけても、原川さんに起きる様子はなくて、八田くんがおぶって田淵さんの部屋まで運ぶことになった。


「八田くん、ありがとう。コーヒー淹れたから飲んでいって?ね、皐月さんも」

「……ありがとう」


できれば早く帰りたかったけど、田淵さんの好意を無駄にすることはできない。

それにストーカーのこともあるし、原川さんが一緒とはいえ彼女は寝入ってしまってる。

一人でいるのと同じようなものだもの、少し位一緒にいてあげた方がいいのかもしれない。


「田淵さん、あの……聞いてもいい?」


3人で向かい合う形でコーヒーを飲んでいたのだけど、お互いに会話を交わす訳でもなくて、無言に耐えられず口を開いた。


「なに?」


「あの、ストーカーのことだけど……」


私が発した言葉にいち早く反応したのは、隣に座ってコーヒーを飲む、少し眠そうな八田くんだった。


「なに?ストーカーって」

「べ、別にそんなに過剰な反応しないでよ」


迷惑そうな彼女の言葉を、少し不思議に思った。

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