キライ、じゃないよ。
「護、」


揺れたかと尋ねたきり黙ったままの俺を、どう思ったのだろうか?

不機嫌に歪む唇を見ながら、護の名前をもう一度呼んだ。


「……なによ」

「好きなんだけど」

「……え?」


まさか、さっきのセリフから告白に繋がるとは想像もしていなかったのだろう。

何を言われたのか分からない……そんな驚きに満ちた目が俺をまっすぐにみつめている。


「……既読無視状態かよ」

「は?……え?だって!」

「だって、じゃなくて。やっと言えたんだからさ。聞かせてよ、護の気持ち」


帰ってくる答えは、図々しくも一つしかないと思ってる。

護の返事を聞けたら、そのあと溢れるだろう諸々の言葉は塞いでやろう。

もうすぐにでも触れたくて、自然と身体は護へと近づく。


「わ、私……て言うか、樫近いよ……」


護の掌が俺の胸を押した。

は?此の期に及んで、俺の望み以外を先に口にするなよ。

こっちは自制心ギリギリのラインで保たせてるのに。


「男はさ、逃げられると追いたくなるもんなの。加えて、自制心の糸はすごく脆い。俺、結構我慢してるよ?それとも、焦らしてるの?」

「焦?……ち、ちがう」


焦らす、なんて芸当が出来る護ならば、俺はきっとここまで彼女に執着したか分からない。

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