キライ、じゃないよ。
「チョコって言えばさ、あれ絶対チョコだよなぁ?」

「あれな!どう見てもチョコだろ」


自分たちの席に戻り帰り支度をしながら2人が話す会話が、耳に入ってきた。

山近を見ると無言で頭を振るだけだ。


「羨ましいな、皐月からチョコ貰えるやつ……てか、樫じゃねぇの?相手」


パッと顔を上げ、俺の方を見た男子達を見て「は?」と間抜けな声が出た。


「実際どうなの?樫って皐月と付き合ってんのか?」

「な、何言ってんだよ。んなわけねぇだろ」


焦って声が上ずってしまった。今までだってこんな風に聞かれる事は何度もあった。

その度笑い飛ばしていた。そんな俺の様子を知ってか、クラスの奴らは護と俺はただの友達だとなんとなく理解してくれていたようだった。

それは今だって同じ筈なのに。


「お前ら仲いいのにな。」

「あ?……そう、だな」


確かに仲はいい。護も、幸島も、他な女子とは全然違う。

気楽に付き合える。

それは今でも、これからも同じだと思う。


「じゃあ誰なんだろな、あのチョコ貰えるやつって」


羨ましいと連呼する目の前にいる奴らが段々ウザイと感じ始めていた。

別に護が誰に何をやろうが関係ない。

アイツにはアイツの付き合いがある。俺たちの他に友達だっているし……好きなやつだっているんだろう。

それを俺が知らないからどうだって言うんだ。

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