キライ、じゃないよ。
「マジかよ。そんなにたくさんチョコ貰って、皐月とも仲良くて、調子に乗ってんじゃねぇのか?」

「おい、やめろよ。お前ら熱くなりすぎ……」


隣で山近が間に入るのが分かった。

それを片手で押しのけて、目の前に立つ男子に向かって強い口調で言い放った。


「調子にのってなんかいねぇし、護とはマジで何もない。好きでもなければ、そういう目で見たこともねぇよ。俺がアイツと付き合うなんて絶対あり得ない!」


相手が怯んだ事で我に返った。

そして山近の言葉を思い出す。

俺は何をムキになって言い返してるんだ?


「わ、分かったよ。悪かったな、今度から下手に勘ぐったりしないから怒るなよ」


慌てて鞄を掴むと教室から出て行こうと、男子達が教室の扉を開けた。

けれどすぐに出て行かず、直立不動状態になっている事に訝しみ視線を向ける。

そして見えたのは呆然と立ち尽くす護と、護の体を支えるようにして隣に立つ幸島だった。

何かにひどくショックを受けているような、そんな顔色の悪い護が目に入って言葉を失う。


「皐月……今の、聞いて?」


男子達の声に我に返った様子の護は、けれどすぐに笑顔を見せた。

まるでさっきの表情が気のせいだったのかと思うほどの、明るいいつもの笑顔だった。


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