優しいあなたの嘘の法則



「そしてやけ酒して二日酔い真っ只中、というわけです…」
「なるほど、だからそんなに顔が青ざめているのね」
「もう二度とお酒は飲まない、絶対」
大学内のラウンジはゆったりとした時間が流れている。各々が自分たちの話に夢中になっていて、時折笑い声が聞こえてくる。
そんな平和な昼下がり、私は机に突っ伏して、呻くような声を出してそう言った。友人のナオちゃんはそんな私を見て苦笑した。

「一之瀬さんのこと、一回の時からずっと好きだったもんね」
ナオちゃんの言う通りだ。ずっとずっと片思いしてた。でも一瞬で振られてしまい、あっけなく私の恋は終わったのだ。
じわり、とまた涙が出そうになる。昨日、一生分の涙を出したと思えるほどには家で泣いたと思っていたのに、まだ足りなかったみたいだ。

「よし、実希(ミキ)。合コン行くよ」
「え……?」
「失恋の傷を癒すには、新しい恋しかないのよ!って、お姉ちゃんが言ってた」
「自分の経験談ではなく…?」
「ま、いいじゃん」
「私、合コン行ったことないんですけど」
「大丈夫、合コンって言葉変えたらただの飲み会だし。私がセッティングするから、男子も知り合いしか呼ばないし。私も参加するから。新しい恋見つけよう!」

明るく言ったナオちゃんから、私のことを心配しているというのが伝わってきて、別の意味で泣きそうになった。

正直言うと、ふられたばかりで新しい恋をする余裕はない。でもナオちゃんの優しさがとても嬉しくて、ナオちゃんの気持ちに応えたいと思った。

「新しい恋、見つけるーー!」

私はナオちゃんにならって、大きな声でそう言った。周りにいた数人がその声の大きさに反応して私の方を向いた。しかしすぐに元の態勢に向き直って、各々の会話に夢中になる。
大丈夫だ。合コンで、一之瀬さんよりも素敵な男の人にめぐり逢える。きっと。
そう心の中で言い聞かせた。

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