あんずジャム


「寒っ」



コートを着てもまだまだ寒く、優羽は公園のなるべく日当たりの良いベンチに座る。

カバンから先ほど店で読もうとしていた小説を取り出し読み始めた。


しばらく時間を忘れて読みふけっていると、突然頬に温かいものを当てられた。



「わっ‼」



優羽が座っているベンチの後ろからのぞきこむようにしている玲也が、フタをした紙コップを当てていた。



「神田さん!お仕事お疲れ様です」


「寒いんだから、店で待っててくれたら良かったのに…」


「待ってるお客さん多かったので」



玲也は優羽の言葉に不満そうな顔をする。



「まったく、風邪引いたらどうするの…
はい、これ」



玲也は先ほど頬に当ててきた紙コップを優羽に手渡した。



「あ、ありがとうございます。えっと、これは…」


「新商品、アップルミルクティーラテ。
優羽ちゃんが看板を物欲しそうに見てたから」


「ば、バレてました…?」



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