あんずジャム
店長のハッキリとした物言いに、彼女たちは完全に言葉を失う。
しばらく呆然としていた二人は、やがて怒りと恥で顔を赤くして、立ち上がった。
「行こう、エリ」
乱暴にお金を机に叩きつけた巻き毛の子は、
「こんな店、二度と来ないからっ!」
そんな捨て台詞を吐いて、茶髪の子と共に店を出ていく。
店内には、静寂が戻る。
と、誰かが拍手をした。
そして、それは店の人皆に広がる。
それが優羽に向けられているものだというのには、店長から「ありがとうございました」と笑顔でお礼を言われるまで気がつかなかった。
優羽はとりあえず席に戻り、何事もなかったかのように、あんずジャムとスコーンを注文する。
あのような行動を起こしたきっかけが、彼女たちのどちらかが言っていたように、あんな風に玲也と話せるのを見て悔しく思った、というのもあったのは確かだ。
だからこそ、お礼を言われることに多少の罪悪感があった。
それでも──
(少し前の私なら、あんなことするなんて、あり得なかったな…)