あんずジャム


店長のハッキリとした物言いに、彼女たちは完全に言葉を失う。

しばらく呆然としていた二人は、やがて怒りと恥で顔を赤くして、立ち上がった。



「行こう、エリ」



乱暴にお金を机に叩きつけた巻き毛の子は、



「こんな店、二度と来ないからっ!」



そんな捨て台詞を吐いて、茶髪の子と共に店を出ていく。


店内には、静寂が戻る。



と、誰かが拍手をした。

そして、それは店の人皆に広がる。


それが優羽に向けられているものだというのには、店長から「ありがとうございました」と笑顔でお礼を言われるまで気がつかなかった。


優羽はとりあえず席に戻り、何事もなかったかのように、あんずジャムとスコーンを注文する。


あのような行動を起こしたきっかけが、彼女たちのどちらかが言っていたように、あんな風に玲也と話せるのを見て悔しく思った、というのもあったのは確かだ。

だからこそ、お礼を言われることに多少の罪悪感があった。


それでも──



(少し前の私なら、あんなことするなんて、あり得なかったな…)


< 51 / 116 >

この作品をシェア

pagetop