もしもあの時


衝撃は受けた。


ショックだった。


でも、わかっていたよな。


俺は遅かれ早かれこうなる日が来ることを、この知らせが俺のもとに来ることを知っていたんだ。


ラグビー部のグループLINEには次々と情報が舞い込んでくる。


通夜の日程、葬式会場、行けそうかどうか。


実感がない。


兎に角、それだけだった。


実感がないから、やるべきことを淡々とこなす。


明日、仕事を切り上げて中標津へ向かうためには、やっておきたいこと沢山ある。


葬儀会場はタッキーの地元の中標津。


俺は札幌に住んでいるから、中標津までだと高速を使っても、7,8時間かかってしまう。


普段は割と❝計画❞なんてことはしないタイプで、仕事以外は行き当たりばったりな性格なはず。


それなのに、何故か今頭の中は異常なほどの冷静さで今後の段取りを考え始めている。


頭の中が静かだってこういうことをいうのだろうか。


北海道の2月といえば、路面も凍結し、天候が崩れればホワイトアウトになることだってある。


そうなれば、何時間も遅れることも考えられるから、早めに出発するに越したことはない。


感情は置き去りにされたまま、思考だけが動いていく状態にこの時は違和感すら感じていなかった。
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