ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
指や唇でたっぷりと愛でられ、どうにも声を抑えられなくなってきた頃、朝羽さんも自身の服を脱ぎ捨てていた。

汗ばむ頬についた私の髪をそっと掻き上げた彼は、余裕がなさそうな表情で力強く告げる。


「初音の全部、俺のものにするよ」


普段のクールさは影を潜め、情熱をたぎらせる彼の姿に、胸の高鳴りが止むことはない。

“いい?”と聞かないところが、珍しく強引というか、男らしいというか、とにかく彼に独占されることを嬉しく思う。

お互いが、お互いの一部になればいい。そんなふうに望んで、私がこくりと頷いたのを合図に、ふたつの身体が繋がる。


「愛してる」と囁き合い、体温を同じにする。

言葉以外にも、身体全体で確かめ合える愛情表現があるのだと、初めて知った。

晩春の夜空には、美しく霞んだ月が浮かんでいる。

その朧月のように、私たちは幸せという薄絹をまとって、夫婦の契りを交わした。




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