ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
戸籍上の夫婦になっていれば、なんの問題もなかったのにな……と、心の中でたらればを言っていたとき、スタッフルームから休憩中の大石さんが顔を出した。


「ちょっとちょっと、梢ちゃん!」


なにやら必死に手招きをするので、呼ばれた梢さんは不思議そうにそちらへ向かっていく。

どうしたんだろうと気にしつつも、私は備品の整理を続ける。しかし、紙袋が残り少なくなっていることに気づき、結局私もスタッフルームに取りに行くことにした。

ドアの前まで来て、取っ手に手をかけた瞬間、なにやら中から驚いたような梢さんの声が聞こえてきて、ぴたりと一時停止する。


「“一条朱華の新たな恋のお相手は、某高級ホテル関係者か”……って、ここのこと!?」

「この記事の感じだとそうよねぇ」


朱華さんの話? ……気になりすぎる。

詳しく知りたい気持ちを止められず、静かにドアを開ける。私たちだけのときはノックせず入るのが普通になっているため、悪いことではないだろう。

そっと観察すると、テーブルに週刊誌らしきものを広げて、ふたりで覗き込んでいるようだ。また朱華さんのスクープが載っていたのだろうか。

< 188 / 273 >

この作品をシェア

pagetop