ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
私の祖母は、初恋の男性を胸に秘めていても夫婦間の大きな問題はなく、祖父とほのぼのとした家庭を築いた。

おそらく、初恋の人も特別で大切な存在だったのだろうけれど、祖父のことも間違いなく愛していたのだろう。

だからきっと、決められた結婚だって愛は生まれるはず。本気の恋を知らない者同士の私たちにも、その可能性はある。

どうせ結婚するなら、幸せな生活を送れるように愛を育みたい。

……そんな思いを込めて、つい提案してしまったものの、無表情で微動だにしない朝羽さんに気づいてはっとした。

やば、引いてらっしゃる? やっぱり明け透けに話しすぎた?


「……って、急になにを言うんだって感じですよね。あはは」


意味もなく前髪を触り、渇いた笑いでごまかす。無意識に力が入っていたらしく、若干前のめりになっていた体勢もしおしおと元に戻した。

恋って努力してできるものじゃないよね……と、今さらながら自分の発言のおかしさに落胆した、そのとき。

衣擦れの音がして目線を上げると、なぜか朝羽さんがおもむろに腰を上げ、こちらに向かってくる。

百八十センチ近くありそうな長身で、スタイルも完璧であることがよくわかる。

その姿を、私は前髪から少し手を離した状態で固まったまま、ぽかんとして目で追うだけ。

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