ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
お客さんにおでんを渡して戻ってきた彼女は、カウンターの向こうの台に両手をついて、真剣に言う。


「とにかく、なにか困ったり悩んだりしたら、すぐ私に連絡しなよ」

「いや、そこは俺だろ」


すかさず割り込んできた兄を、真琴は据わった目で見やる。


「女の悩みが童貞のシローさんにわかるの?」

「おぉい! 俺のことバカにしすぎだろ、まこっちゃん!」


冷ややかな親友と、怒りつつ嘆く兄にひたすら笑いながら、私は「どっちにも連絡するから!」と宥めた。

こんな調子だけど、ふたりが付き合ってくれたらいいのにな、と私は前々から思っている。

ふたりともあまり積極的に恋バナはしないから、誰々と付き合うことにした、と事後報告されて驚かされることが多い。

お互い恋人がいたことはあるものの長続きせず、別れるたびふたりして罵り合っていたりするのだけど、それは好き同士だからこそなんじゃないかと思うのだ。なんとなく、女の勘というやつで。

お邪魔虫の私がいなくなったら、少しは仲が進展するかな……?

なんて密かに期待して、いまだに言い合っている息ぴったりなふたりを微笑ましく眺めながら、残りの生酒に口をつけた。




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