ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
「これで、田舎者の私が東京都民に……!」


そう、デート一発目に向かったのは区役所であり、たった今住民票を移す手続きをし終わったところ。

昨日、朝羽さんが住むマンションに引っ越しを終え、休みを取ってくれた彼とさっそく転入届を出しに来たというわけだ。

家族や真琴との別れはかなり寂しくて、こちらに来る新幹線の中でちょっぴりうるうるしていたというのに、今はすでに立ち直っている。東京都民になれただけでなく、朝羽さんの妻になったのだから。

住民票を移すと同時に、事実婚にしたい旨を伝えたら、続柄の部分に【妻(未届)】という記載をつけてもらえたのだ。特別な手続きはしていなくても、その文字を見ただけで気持ちが引き締まる。

感激を覚えていると、朝羽さんはいつもの無表情で「おめでとうございます」と反応してくれた。

春らしいニットに黒のスキニージーンズを合わせた私服姿の彼も、大人っぽくてセンスも良く、当然ながらカッコいい。

さらに、いつもすっきりとセットされていた髪の毛も、今日はラフに毛先が散らされているのだ。その無造作具合も、プライベート感があってたまらない。


一方、私はかぎ編みのニットに膝丈のシフォンスカートというスタイルにしてみたけれど、どう頑張っても彼とは釣り合っていない気がして仕方ない。

生活拠点も移したし、これで事実婚は成立するとしても、やっぱり夫婦になったという実感はまったく湧かないな……。

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