ご縁婚〜クールな旦那さまに愛されてます〜
颯爽と去っていく姿を見送り、やる気を出してさっそく商品を並べ始めたのもつかの間、視線を感じてぱっと顔を向ける。

隣の棚の陰からこちらを見ていたのは、締まりのない顔でニヤけている大石さんと水岡さんだ。


「いいわねぇ~初々しくて」

「大石さんにもあったんですもんね、ああいうときが」


いや、普通に話していただけですが……と、羨ましそうにするふたりに苦笑する。

お客様がいないのでふたりも陳列を手伝い始めると、案の定質問タイムに突入だ。


「ねぇ、家での霞さんってどんな感じなの?」

「それ私も気になる」


興味津々な大石さんに、水岡さんも続く。ここは正直に言ってしまってもいいだろう。


「クールです、すごく。表情筋あるのかなってくらい滅多に笑わないし淡々としてるので、皆さんと朗らかに接してるのを見て、ちょっとびっくりしてます」


今だって、私と話してるときだけ最後まで笑顔はなかったもんね。

ほんのわずかな不満を交えて明かすと、水岡さんがぱっちりとした瞳をしばたたかせる。


「そうなんだ! いつも穏やかなのかなって思ってたけど、やっぱり霞さんも仕事中は気を遣ってるのね」

「そりゃあ、素を見せられる相手じゃなきゃ結婚しようと思わないでしょ」

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