透明な恋《短》
彼に手をひかれいつもの場所に着くと、椅子に座るように促された。
「それで??あいつが伊達さんに透明人間って言い始めたの??」
『……よくわかりましたね』
「元クラスメートって言ってたし……。あとは勘だけど」
『……中学でも今みたいな感じで、気づかれず驚かれるって生活だったんですよね。黒田君は何故か、一度も驚いてなかったけど』
……そういえば彼、一回も驚いてなかったな。気配で分かるとか??忍者か??
『別に仲良かったわけでもないんですけど。何の前触れもなく「お前、透明人間だな」ってそれからそう呼ばれるようになって、クラスで定着し始めて』
今に至ります……。とざっとの経緯を話した。
「……そーゆーこと。……ライバルか」
『ライバル??なんの??』
「なんでもない、こっちの話」
『そういえば、今日は茜さん??とてっきり帰るんだと思ってました』
「んー、こっちが優先」
フフッと笑う夜木君に、顔が少し赤くなる。あー本当に勘違いしてしまうからやめて欲しい。
勘違いしたら、きっと苦しむのは分かってるのに……。
それでも、勘違いしてこの幸せな気分に浸っていたいと思うあたり、もう後戻りできないほど、私の中で彼の存在が大きくなっているのかもしれない。