いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
「それともう一つ――俺より弱いやつとはつき合うな」
「えー、強ちゃんより強い人なんて、お父さんと爺さましかいないじゃない。いつまでたっても彼氏ができないよ」
「出てくるまで辛抱しろ」
強は勝子の頬を包んだ指をするりとおろし、つまんで横に引っ張った。
「わかったよ。じい様みたいな強い人の登場を待つよ」
強がくすくす笑う。
「変な顔だ」
「強ちゃんがほっぺった引っ張ってるからでしょ」
「変な顔だけど可愛いな」
おもしろがって強が勝子の頬を上下に左右に引っ張る。
「誰も現れなかったら? 私、ずっと一人でいるわけ?」
「そしたら――」
強が勝子の頬から手を放した。
「そしたら?」
引っ張られた頬をさすりながら勝子がおうむ返しにたずねる。
「そしたらずっと俺のそばにいればいい」
強はまるで子供にするように勝子の頭に優しく手を置いた。
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