いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー

次のターゲットは私?

と、そんないわくつきのモカシンを光の手からひゅっと取り上げ、ひかりが「あ」と声を漏らしたときには、勝子はスカートを翻し去っていた。

教室に戻ると山城さんがささっと近づいてきて、「これ」と、ノートをちぎったと思われる4つ折りの紙を勝子に渡し、またささっと席に戻って行った。
大きな体と、繭のように丸く縮こまったさきほどの姿に似合わず、とても迅速な動きだった。

席につくと勝子はその紙をすぐに開いてみた。

『これからされるかもしれないこと』
・みんなからの無視
・机や椅子への落書き
・黒板への落書き
・変な噂をラインでばらまかれる
・私物を盗まれる
・体育の時には制服をトイレに投げ込まれる可能性あり
・弁当を捨てられる
・暴力(突き飛ばされたり、どつかれたり)
・金をゆすられる
・全員からの無視
・変な写真(太い脚のすね毛とか太い眉毛)とかをネットに上げられる

ここ2カ月の私へのいじめはこんな感じです。
まだエスカレートするかもしれないけど。
あなたも同じような目に遭うかもしれないので、気をつけて。
私にかまわなくていいです。
そのせいでターゲットになってしまうし、私へのいじめももっとひどくなるかもしれないし。
でも有難う。気をつけて。

角張った丁寧な文字でそう書いてあった。
ふんふんふんと、勝子は校則でもチェックするような気楽さで目を通し、「ま、こんなものか」とひとりごちた。
視線を感じて顔を上げると山城さんが心配そうに様子をうかがっていたので、「大丈夫」というつもりで「Good!」と親指を立ててみせた。
でも怪訝な顔をされただけだった。
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