いつか恋とか愛にかわったとしてもー前篇ー
それはもしかしたらたくさんのいじめと闘ってきたからかもしれないと、勝子のお母さんがこっそり教えてくれた。
「転校生ってね、意味もなくいじめられるのよね」

そう、いじめはほんの些細な感情から発生する。
あとから群れに入り込んできた転校生はそれだけで一つの理由になるのだろう。
でも勝子の場合はそうじゃない。
強さとか潔さとか、よくわからないけど勝子が発しているそうしたほかの子とはちょっと違う雰囲気が、普通の生徒からねたまれる材料になる。
愚かな生徒は悔しさとか嫉妬をいじめで解消しようとする。
心が狭いのだ。
許せないのだ。
でも、きっと勝子はそんなわけのわからない黒い感情といちいち戦ってきたにちがいない。
勝子の精神はそうやって武術にもまして磨かれ逞しくなっているのだ。

気合をいれないと自分はいつまでたっても勝子に追いつけない。
そしてあの人――自分より強くて、自分よりもっと、勝子のそばにいる――あの人にも。

勇はときどき無性に焦りを感じる。
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