エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
「ごめんなさい、紗凪さん。私は何て酷いことを……」

美玲さんのすすり泣く声が私の耳に届いたそのとき。

「すべては私が招いたことなのだな。東條家を壊したのは紛れもないこの私だ」

部屋に響いたのは聖さんのお父さんの声だった。

「父さん? なぜここに? それに母さんと悠斗も……いつからそこにいたんですか?」

「悠斗から話を聞いてな。ここに飛んできたら美玲の声が聞こえた。こんな事をするほど美玲を追い詰めてしまったのだな」

そう言って足を進めてくるお義父さんと美玲さんのもとへ駆け寄り背中を摩り出したお義母さん、そして呆然とその場に立ち尽くす悠斗さんが目に飛び込んできた。

「紗凪さん、こんな思いをさせてしまって本当に申し訳なかった」

次の瞬間、私に向かって深々と頭を下げたのはお義父さんだった。

「お、お義父さん! 頭を上げてください!」

思わぬお義父さんの行動に驚いて私は必死にお義父さんの体を起こそうとした。

お義父さんの目には涙が滲んでいた。

「父さん、確かにあなたが言うように東條家は今バラバラだ。だけど誤解を解いてそれぞれが抱えた想いにちゃんと向き合えばまだ間に合う。私たちはまたひとつになれると信じています」

聖さんがお義父さんの目を真っ直ぐに見てそう言い放った。
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