エリート弁護士は契約妻への激愛を貫きたい
妹は今、薬剤師を目指して薬科大学に通っている。一生懸命勉強をしてその合間にバイトをして生活費を稼いで、夢に向かって頑張っている姿を知っているだけにそんな妹の夢を奪うことなんてできない。

冷静になって考えてみれば両親が仕事を失えば路頭に迷い、生活だって出来なくなる。妹だって大学を退学しなければいけなくなるかもしれない。

昔から勤めてくれている従業員さんやその家族の顔が次々と浮かんできて胸が苦しくなった。

「すまないが……ひとまず会ってくれるか?明日、わざわざ東京からその社長さんと奥さん、そして息子さんがここに来てくれる事になっている」

「……」

愛がない政略結婚なんて絶対にあり得ない。私はずっと大好きな人と結婚して幸せな家庭を築く事を願っていた。

そもそもお嬢様でも家が金持ちでもないのに、政略結婚をさせられそうになっているというのは不運すぎる。

様々な感情が頭と心の中を駆け巡って父の提案を拒否できない私がそこにいる。

「……ひとまず、会うだけだからね? 結婚するとは言ってないから!」

長い沈黙の後、私が出した答えがそれだった。
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