センパイの嘘つき


先輩は、なにも言わなかった。


「今でも、夢にみるんです」


私は引きつった笑顔を貼り付けて言う。


そして突きつけられる。


忘れられない、あの日の記憶を。


変えられない、現実を。


「お母さんにはたくさん心配かけて、今でも私より敏感だから。」


だから。


「そんな夜は、眠れなくて。泣くことも、誰かに言うこともできなくて。待つんです。夜が明けるのを。1人で、ずっと」


私は、なにが言いたいんだろう。


こんなこと先輩に言って、なにを求めてるんだろう。


でも、なぜか、視界がかすむ。


目が熱くなって、引きつった笑顔がはがれる。


「でも…1人って、意外と、っ、辛くて」


声が、震える。


ぼやけた視界の中で、先輩が目を見開いたのが見えた。


「っ…たまに、耐えられなくなりそうになるんです…!」


いっそのこと死にたい、と思ってしまうんだ。

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