天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



あ……しまった。
隠すのを忘れていた。


首筋に紅くきれいに残っている、天ヶ瀬くんがつけたキスマーク。

今までは不自然にも首元を隠していたけど、今日はそこまで気が回っていなかった。


あれから日にちは経っているはずなのに、なかなか消えそうにない。


「ほんとムカつくことばっかりしてくれるよな」

それ前に似たようなことを天ヶ瀬くんも言ってた気がする。

って、そんなこと今はどうでもいいか。


「独占欲丸出しかよ……」

そう言いながら、わたしの制服のボタンをいちばん上までピッチリしめられた。


「うっ、苦しい苦しい!」

「バーカ、こうしないと見えるだろーが」


いまどきこんな風にしっかり制服着てる子なんていないのに。

あとで学校に着いたら絆創膏でも貼ろう。

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