守りたい人【完】(番外編完)

思い出される日々を塗り潰すように、強く目を閉じる。

蘇る仲間達との日々を脳裏から消す。

苦しくも充実していた日々を脳裏から消す。

最後に俺の名前を呼んで、門まで送ってくれた部下達の顔を脳裏から消す。


そっと閉じていた目を開ければ、そこには何も無かった。

無人の小さな駅の中で、俺だけが忘れ去られたように佇んでいた。


「……俺は、何してんだろうな」


小さくそう呟いて、近くにあったベンチに力なく腰掛ける。

まるで自分の体じゃないように、力が入らなかった。

胸の奥に常にあった炎のように熱いものが、今はもう感じられない。


自分で選んだ道なのに、俺はいつまで過去に縋りついているのだろうか。

いつまで、こんな廃人のような生活を送っているんだろうか。

自嘲気味に笑って、顔の半分を手で覆う。



これで、よかったんだ。

これで――――。
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