守りたい人【完】(番外編完)
抑えきれずに、グイッと腕を引いて額にキスを落とした。

そして、頬から顎先へと指を滑らせて顔を持ち上げた。

それから、ゆっくりと今度は唇にキスをした。


「んっ」


小さな声が聞こえたと同時に唇を離す。

すると、目の前には真っ赤になった顔のまま瞳を潤ませる志穂がいた。

その茹でダコ加減といったら凄い。


無意識に頬を上げて、ポンっと志穂の頭に手を乗せる。

柔らかい髪がフワフワと揺れている。


「いってくる」


真っ赤な顔のまま硬直している志穂に片手を上げて歩き出す。

志穂に至っては、放心状態のように弱弱しく片手を上げてヒラヒラと振っていた。


その姿に笑いが込み上げてくる。

だけど、仕事に遅れてはいけないと思い歩みを早めた。


しばらく歩くと、背後から『いってらっしゃい!』と大きな声が聞こえた。

振り返ると、真っ赤な顔のまま満面の笑みで手を振る志穂がいた。


「あぁ」


同じように手を振り返して、再び歩き出す。

緩む頬を空に向ければ、どこまでも続く青空が広がっていた――。




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